(指令3・敗戦責任を取れ)

「ちょっ、ちょっとやめてくださらない?サンダースさん・・・」
沈黙を破ったのは、シャロンだった。
「・・・そういうわけにはいかん。私は、こんなことをしても償いきれぬことをしてしまったのだ。
 私一人の失策で、皆に多大な迷惑を掛けてしまった。この戦いは私一人のせいで負けたようなものだ。
 正直、これくらいで済むとは思わん。特にレオン殿、貴殿にはすまないことをした。
 あんなことを言っておきながら、このざまだ。憎んでも憎み切れんだろうな・・・」
サンダースは大きな体を限りなく小さくして、地面にはいつくばっていた。
誰の目にも、これはパフォーマンスなどではないということは明らかであった。

「おい、サンダースさんよ。」
レオンはサンダースの前に出ると、言った。
「俺はあんたを憎んじゃいねえよ。あの時のセリフだって、悪気はないのは分かってるからな」
「でもよ、まだ負けてもいない勝負を、勝手に負けたっていうのは気にいらねえ。
 まだ勝負は始まったばかりだぜ?諦めてどうするよ?」
「しかし、あれほどの点差をつけられてしまっては・・・」
「ほらほら、そういうのが気に入らねえってんだよ。とにかく、あんたはここで俺たちの戦いをしっかり見てな。
 必ず逆転して見せっから。な、みんな?」
レオンは、みんなの方を振り返ると、返事を促すように手を広げた。
「その通り!ね、みんながんばろっ!」
ルキアが元気に応じる。そういえば、いつもいつも、このクラスを引っ張っていくのはこの2人だった。
そう思いながら、カイルもそれに応じる。それにアロエ、ラスク、クララ、シャロンが続いた。
「ふん、それにはまず次の2回戦で差を縮めていかないとな。レオン、君の番だぞ?
 逆に差を広げられないようにしろよな」
「当然だ、セリオス。お前こそ、せっかく俺が縮めた差をまた広げないようにな!」
「はいはい、そこまでそこまで。まったく、この二人はこんな時でもこうなんだから・・・」
またまた止めに入るルキアであった。
「ルキアちゃんが一日に二度止めに入るなんて滅多に無いよね・・・」
とはその時のアロエの言葉である。

(指令4・劣勢を挽回せよ)

その後、レオン達は僅差の勝利を重ね、上位との差をじりじりと縮めていった。
そして、いよいよ最終戦(第9戦)となった。

「僕達の最後を務めるんだ、精一杯戦ってきてくれよ」
8回戦を勝利で飾ったばかりのセリオスが言う。彼自身も9回戦の候補だったが、自分はプレッシャーの
かかる最後はあまり好きでないとのことで、8回戦を希望したのだった。

「頑張ってね」「頑張れー」
ラスク・アロエの年少コンビも応援する。この二人、年齢は低くても落ち着いた戦いをして、僅差ながらも
堅実に勝利を掴んでいた。ここら辺はさすが、飛び級といったところだろうか。

「しっかり頑張ってくださらないと、私たちの苦労が台無しですわ」
シャロンも、得意の○×を武器に、しっかり勝利を掴んでいた。

「頑張って、くださいね」
クララが最後の励ましの言葉を言う。クララ自身も、学問を武器に堅実に点数を積み重ね、
終わってみれば同点ながらも優勝していたのである。

「やっぱ最後はお前しかいないよな」
「そうそう、大トリ、頑張ってねぇ〜」
レオンとルキアは、優勝こそできなかったものの、上位にピッタリ食いついて点差を広げることを許さなかった。
ただ、彼らは本人の点数よりも、周りの雰囲気を盛り上げ、全員が100%の力を出し切れるような環境を作った
という点で評価されるべきなのかもしれない。

「それじゃあ、行きますか。」
9回戦の出場者、カイルは立ち上がり、コロシアムへの道に足を踏み入れようとした。
その時である。

「カイル殿、私がこんなことを言えた義理ではないのかもしれないが・・・頑張ってくだされ」
サンダースの声であった。
カイルは少し驚いたような表情を浮かべたのち、ニッコリ笑って、言った。
「ありがとう。でも、『カイル』でいいですからね」
「僕達、仲間同士なんですから」

そう言うと、カイルはゆっくりと、コロシアムの方へと歩いていった。


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