「ルキア、50点―――不合格だな。」
教師が掲げた手に雷が走る。
そして―――
教室にズガーン、と音が響き、
雷が少女――ルキアに落ちる。
「ちょっと何すんのよー!」
ちぇっ、と言うような顔でルキアは席に戻る。
「マラリヤ、40点―――これでも喰らえ!」
少女――マラリヤは目から涙を零すも、
その痛みに耐えた。
「―――ッ……呪うわよ……。」
マラリヤは教師――フランシスをキッと睨み、
自分の席へと帰った。
教師は黒板を強く叩き、
「いいか諸君、こんな酷い点数じゃ上級魔術師にもなれないぞ」
と、生徒に一喝した。
――休み時間を告げるベルが鳴った。
フランシスは怒り顔で教室から出て行った。
教室がざわっ、と話し声に満ちた。
「マラリヤちゃん、どしたの?」
隣の席のルキアが、怪訝そうに声を掛ける。
「何が?」
先ほどの事が無かったかのように、
マラリヤは冷静に応対した。
「――だってさ、いっつも良い点取ってたのに……。」
ルキアはうーん、と難しい顔をして、マラリヤを見る。
「ただ苦手なジャンルだっただけよ?」
クスクス、とマラリヤは笑う。
「でもおかしいよねぇ―――40点なんて。」
ルキアは小声で呟く。
予習の合格点は60点。
マラリヤはそれを大きく下回る結果を出した。
「想い出なんて―――いらないのに」
暗い過去を引きずり出すような声で、マラリヤは呟く。
「マラリヤちゃん、なんか言った?」
「いえ、何も。」
ルキアは席から立ち、
「んじゃ、あたしは今から美術の仕事があるから!」
と言って教室から出て行った。
マラリヤは溜息を一つ吐き、
「いつだってそうよ――――
お父さん、お母さん、あなた達は私を見ている?
私はあなた達のように偉大で賢い魔術師にはなれないのよ?
――そこの所、わかっていてね?」
うわ言のように呟き、目を瞑る。
「―――いつからこんな性格になったのかしらね。」
それはマラリヤがまだ幼い頃―――――
「お父さん、お母さん!」
綺麗な花を両手一杯に持って、
我が家に駆け込んで来る――――筈だった。
「――――――――?」
見た瞬間、わからなかった。
我が家は漆黒に染まり、
そして崩れている。
その瓦礫の下には―――
動かない、父と母。
「お……父さん?お母さん……!?」
「ちょっと!ちょっとどうしたのよマラリヤちゃん?」
マラリヤの肩を叩き、現状を聞く近所の女。
「お父さんが……お母さんが……」
「いい、これからお姉さんが病院まで連れて行ってあげるから、
マラリヤちゃんは私の家で待っていてね?」
治るんだ、とマラリヤは思い込んでいた。
マラリヤはニコ、と笑って、
「うん、わかった。じゃあ私待ってるよ!」
と、言ってマラリヤは女の家まで駆けて行った。
「いい子だね、マラリヤちゃんは。」
女は事情を知らないマラリヤの後姿を、
儚げな目で見ていた。
数日後のこと。
「お父さんとお母さんの手術が終わったそうよ」
女はそうマラリヤに話した。
マラリヤは嬉しそうに病院へ向かい、
両親が居る病室の扉を開けた――――
「お父さん、お母さん―――?」
そこには、
大袈裟な機械と、部屋中に刻まれた魔術式と魔法陣。
そして眠ったまま動かない両親。
「君が、マラリヤかい?」
医師が後ろから声を掛ける。
「うん」
「これが、君の両親から受け取った手紙だ。」
「ありがとう、ございます」
医師は用件が済むと直ぐに何処かへ行ってしまった。
マラリヤは病室の扉を閉め、
面会用の椅子に座り、手紙を広げた。
『マラリヤへ
元気にしているかしら?
お母さんも賢者になったけれど、
一向に大賢者にはなれなさそうです。
マラリヤが先に追い越してしまうのかもね?
今は攻撃魔法を勉強しているのだけれど、
あんまり上手くは行かないみたい。』
もう1枚の便箋を広げる。
『マラリヤへ
お前も魔術が立派になって来たな。
そろそろアカデミーへ通わせようと思うが。
それは今度話すとして。
お前も立派な賢者になれるといいな。
父さんは見守ってるぞ』
「死して屍拾う者無し―――あ、死んでいないのね?」
くすくす、と行き成り笑い出すマラリヤ。
病室の日差しはとても暖かく――――
そしてそれは病室の少女を突き放すように。
「何も得られてない、あの日のままなのに―――。」
ふふ、と過去の自分をあざけ笑い、
教室の窓を見た。
あの日と同じ、優しい日差し。
始業のベルが鳴ってしまった。
「忘れたくても忘れられない物よね―――」
まるでそれは魔術のように。
戻るわよ、、、
管理人注釈
ありがとうございました、紫陽花さんm(_ _)m
やはり暗い話に、、、ゲフンゲフン!
いやぁ、だって、マラリヤ様ですもんねw
妄想の余地がありそうな辺りがぐーですねww
おとーさまやおかーさまが、何をしていたのか、とか、、、
その辺りもまた書いてくださってるに違いない、と勝手に思ってます(マテ
書いていただけない場合は皆様により自己補完(激マテ
、、、ハッ!?
あ、紫陽花さん!
またサンダース君がいないのですが!!?