「ここ、かしら―――ね?」

自分の横をパタパタと飛ぶ蝙蝠に、
話し掛ける少女が、1人。

ここ、クイズマジックアカデミーの門の、前で。

少女の名はマラリヤ。
賢者の母と父を持つ天才少女。
しかし幼少期に両親が攻撃魔術の実験中、
不慮の事故を起こしてしまい、
今も何処かの病院で植物状態だと言う。
そしてマラリヤの方は――。
植物状態になってしまった両親を見て、
精神が崩れてしまい、陰気な性格になってしまう。
しかし知性は優れたまま。
中級魔術師合格を入学して早くも遂げてしまい、
手におえないと思った学校側が、
この、クイズマジックアカデミーへ強制転校させた。

「全く―――酷い学校だわ」
マラリヤはクスクス、と笑いながら門をくぐって行く。
「―――君が、マラリヤか?」
そう、マラリヤを呼び止めたのは、
中級魔術師担任のフランシス。
「そうよ。あなたがフランシス先生?」
振り返って、不敵な笑みを浮かべるマラリヤ。
ああ、と頷くフランシスに対して、
「宜しく」
と、先程とは違った笑みを浮かべ、
「教室まで、案内して下さる?」
と、フランシスに催促した。
「付いて来い、なるべく早く、な。」
と、フランシスはそう言って校舎へと歩き出した。

―――教室の扉前。

転校生というのはここで緊張するらしいのだが、
マラリヤは全くそんな表情を見せていなかった。

―――ここが、当たり前。

そんな、余裕の笑みを浮かべて、そこに立っていた。
フランシスが、教室の扉を開ける。

「はじまり、はじまり―――」

御伽噺でも唱えるかのように、
そして楽しそうに、
マラリヤは、教室の喧騒に流されるように呟いた。

「皆、おはよう――まずは転校生の紹介だ。」
おおっ、と声を上げる生徒が数名。
驚きの表情を見せる生徒も数名。

「―――入れ」

扉の開く音。
そして、教壇に立つ。
沈黙が、教室を包む。
「名前は?」
「マラリヤ、よ。」
先程の不敵な笑みを浮かべて。
「席は―――ルキア、お前の隣でいいな?」
ルキアと呼ばれた生徒は、はい、と元気良く返す。
「では1時限目を開始する――座りなさい。」
マラリヤはこくり、と頷き、席についた。

―――休み時間。

「なあ、マラリヤ―――だっけ?宜しくなっ!」
と、赤い髪――先程とは違う――の男子生徒が声をかけて来た。
「―――?あなたの名前は?」
首を傾げて、問い掛ける。
「あ、悪ィ、俺はレオン!」
レオンは握手をする為、
自分の片手を差し出す。
「レオンね―――宜しく。」
微笑み、握手を返す。
それに気付いた男子生徒が、また1人。
「あ、自己紹介がまだでしたね。僕はカイルと言います。」
笑みを絶やさない、とても優しそうな生徒。
「カイルさん―――。宜しく、ね?」
また、微笑んで。
それに気付いた男子生徒と女子生徒がやって来て。
「アタシはルキア!宜しくねっ!」
「ルキア―――。」
「えっと、私クララって言います。宜しくお願いします。」
「クララ―――。」
「あたしはアロエって言うのー、宜しくネ。」
「アロエ―――。」
「私はシャロンと言いますの。宜しく。」
「シャロン―――。」
「ボクはラスクだよ。宜しくねっ!」
「ラスク―――。」
「俺はセリオスだ。宜しくな。」
「セリオス―――。」
それぞれの名前を呪文のように唱え続けたマラリヤは、
数秒目を閉じ、溜息をつく。
「わかったわ。皆―――宜しくね。」
ふふ、と笑いながら、会釈した。
「―――マラリヤさん、制服は?」
カイルがマラリヤの制服――他校の物だ――を見つつ問うた。
「ああ、これ――急に転校が決まったから、制服がまだ届いて無いの。」
ゆっくり、思い出すように答える。
カイルは「そうですか」と頷いた。
「じゃあ早く制服が届くといいな!」
レオンはニッコリ、と笑って言った。
「そうですね。」
クララもニコ、と笑う。
それからマラリヤの机を囲むようにして、
会話は続く。
―――ふと、教室の時計を見たセリオスは、はっとして、
「――そろそろ、授業の時間だぞ?」
レオンは焦るように、
「やっばい、早く座らないとフランシスの雷喰らっちまう!」
と、慌てて自分の席につき、
次の時間の準備をし始めた。
「次の授業は?」
と、マラリヤは問うた。
「魔術だよ!頑張ろうね?」
元気の良いルキアの返答。
にこ、とマラリヤは笑みで返した。


そして、今日の全ての授業が終わる頃、
空は赤くなっていた。
「では、今日はこれまでだ。しっかり予習してくるようにな。」
フランシスが、授業の終了を告げる。
そして、教室から去った。
どっと、生徒の話し声で教室が埋まる。
「あぁ、疲れた!初日のアカデミーはどうだった?」
隣の席のルキアが、そうマラリヤに問いかけた。
「中々、楽しかったわ。じゃあ、明日も宜しく。」
帰りの用意をしつつ、そうマラリヤは答えて、
誰よりも早く、そしてゆっくりと教室から出た。

明日が待ち遠しい、
そう思いながらマラリヤは、校門を後にした。


戻るわよ、、、


管理人注釈
 ありがとうございました、紫陽花さんm(_ _)m
 実は、私が考えてたマラリヤ様登場シーンとは全く違ったのですが(爆
 いやぁ、もっと暗い話をもってくるつもりだったんですよ>マラリヤ様登場
 でも、登場シーンが暗いと、皆と険悪なモードになったシャロン、サンダースの
 回とかぶってしまうし、何より、このお話の作者である紫陽花さんは、マラリヤ
 教とMFCのメンバー様ですから(^^
 という訳で、このお話がマラリヤ様登場のシーンと相成りました。
 、、、あ。
 サンダースいねぇよ(汗

 ではサンダースは、この日、クラス代表として遠征に行っていたことにします(w

 最近、私が本筋を書いてなくて、サボリがちな感がありますが、やはり、各同盟
 の方に、各キャラのエピソードを書いて頂いてこそ、コラボSSだと思うのですよ。
 私が書いていた系統のマラリヤ様のお話は、またいずれ、そちらを別枠として
 うpしようと思います。