公約どおりクララとの相部屋権を手に入れたシャロン。
今まで相部屋だったルキアの私物の片付けが一段落した頃
シャロンが部屋に現れた。

シャロン「あら、未だ荷物の搬出、終えていませんでしたの?早くして下さらない?」
ルキア「わ、判ってるわよ!」
シャロン「あなた、ルキアさんと言ったわね?」
ルキア「? そうよ。それがどうかしたの?」

シャロンが少し躊躇った様な素振りをして言う。

シャロン「・・・追い出しておいて言うのも何ですけど・・・」
ルキア「え? 声が小さくて聞こえないよ?」
シャロン「・・・いえ、何でもないわ。」
ルキア「え? 何よ?」
シャロン「いいから、早くして頂戴。私の荷物の片付けもあるの。」
ルキア「(ムッカー!!)はいはい、出て行きますよっ!クララをいじめたら許さないからね!」
シャロン「あら、私がそんな卑俗な事するわけないでしょう?」
ルキア「どうだか? まぁいいわ。クララ、何かあったらちゃんと私に言うのよ。」
クララ「は、はぁ・・・」

自分の事で揉めている以上、どっちの味方に付くわけにもいかず、
ただただオロオロするクララ。
明らかに腹を立てている足音で部屋を立ち去っていくルキアを尻目に
自分の荷物を解き始めるシャロン。

クララ「あ、あの・・・シャロンさん・・・?」
シャロン「何?」

体は荷解きの作業を止めないまま、返事のみが帰ってきた。

クララ「どうして私と相部屋に・・・?」
シャロン「貴女は知らなくていいのよ。これは私の問題だから。」
クララ「シャロンさんの問題・・・。」

クララは少し考えた。確かにシャロンがここへ転校してくる前から彼女の事は知っている。
というのも、クララが昔住んでいた町を統治していた貴族がシャロンの家だったのである。
しかし、それも随分前のことで、クララとシャロンが出会ったのはごく幼少の頃だった。
その事と関係があるのだろうか?
などと考えているうちにシャロンの次の仕事に取り掛かろうとしていた。

シャロン「さ、次はこの部屋のお掃除ですわね。荷物の移動ですっかり部屋が埃っぽいですわ。」

シャロンが自分の荷物から掃除の道具を取り出す。

シャロン「え〜と、クララさん?」
クララ「は、はい!」
シャロン「この部屋のバケツは何処かしら?」

すっかり掃除用のエプロンに身を包んだシャロンが目の前にいた。
先のルキアとのやり取りの時のような冷ややかな視線とは一変して穏やかな表情であった。

クララ「シャロンさん、一つ質問してもいい?」
シャロン「? ええ、どうぞ。」
クララ「・・・私ってシャロンさんとお話した事ありましたっけ?」

そうクララが尋ねると、シャロンは少し驚いたような表情をした。

シャロン「・・・覚えていらっしゃらないの?私は貴女には感謝しても、し切れないのよ。」
クララ「?」

クララは頭を傾げた。全く記憶に無い。何かしただろうか?

シャロン「ほら、私のペットを助けてくれたではありませんか。」
クララ「! あの時の!!」
シャロン「やっと思い出していただけたかしら?」
クララ「でも、どうして・・・」

クララが思い出したのは、とても昔の事。
クララは屋敷から抜け出したシャロンのマジックペットである白い蛇を見つけ出した事があった。
確かに感謝される事ではあるが、これだけではいささか感謝され過ぎの様な気がする。

シャロン「ほら、私ってこんな性格でしょ? だから、あの頃はあの子ぐらいしか友達がいなくて・・・」
クララ「そうだったんですか・・・。」
シャロン「でも、感謝しているのはそれだけじゃないのよ。」
クララ「え?」
シャロン「ろくに話した事も無い私のために、危険も顧みずに
             崖に飛び込んでくれる貴女に私は憧れたの。」
クララ「え・・・と? そんな事ありましたっけ?」
シャロン「ええ。覚えてませんの? 貴女、危うく死ぬ所だったんですのよ?」
クララ「え〜?」
シャロン「ええ。貴女が空中飛行の術を覚えていなかったら、死んでいましたわ。」
クララ「・・・。」

本当に記憶に無い。それもそのはずである。
クララはそれがトラウマになって今でも空中飛行の魔法は苦手なのだから。

シャロン「さ、早くお掃除を済ませてしまいますわよ。」
クララ「あ、私も手伝います。」
シャロン「いいわ、これぐらいは私にやらせてくださいませんこと?」
クララ「え、でも、ここは私たちの部屋ですし・・・」
シャロン「貴女には、払っても払い切れない借りがあるの。
貴女の雑用ぐらい肩代わりした所で罰は当たりません事よ?」
クララ「シャロンさんがそこまで言うなら・・・お願いします。」
シャロン「ええ。」

シャロンはにこやかに微笑むと掃除に取り掛かった。





窓際に置いてある椅子に腰掛けて夕日を眺めるシャロンがいた。
長身で整った顔立ちに美しい金髪、青い瞳が印象的なその佇まいはとても絵になる。

シャロン「クララさん。これからもよろしくお願いしますわね。」

end


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管理人注釈
 ありがとうございました、クラエスさん。
 完璧です、一字一句、そのまま掲載させて頂きましたm(_ _)m
 、、、とか言いながら、実は、微妙に変更された点が、、、














 私が、改行したトコがあります。 それだけです(笑
 私が書いたら、シャロンとクララだけになってたハズですが、ここに
 ちゃんとルキアも登場させて下さったあたり、流石です(^^
 次回作も期待大ですよ〜♪、、、イラスト付きだと更に良し(マテコラ